東京メトロがテレワークによる減収分を巻き返そうと、休日乗り放題のサブスクを始めるようです。区間が決められた定期券ではなくて、定額サブスクリプションというのは珍しいように思います。
東京メトロ、月2千円で「休日全線乗り放題」…今秋1か月限定で実施
https://news.yahoo.co.jp/articles/a8653f1c30c304d1f5e1be45402167614321c9f1
休日メトロ放題とは
休日メトロ放題とは、2021年秋に1カ月限定でトライアル発売される土日祝日に月額2,000円(税込)で地下鉄全線が乗り放題となる新しいサービスです。購入したPASMO(パスモ)をメトロポイントクラブに事前登録し、2,000円の登録料を支払うことで、翌月の土日祝日に利用した乗車料金がパスモのポイントとしてキャッシュバックされる仕組みです。
”実質”2,000円、翌々月ポイントCB
一般的なサブスクリプションモデルの場合、現金支払いで支払い金額が決まっているという点がありますが、
休日メトロ放題の注意点として、
- 支払い上限は無制限(上限2000円ではありません)
- 土日休日利用分がパスモのポイントでキャッシュバック
という実質月額2,000円という点です。
ポイントキャッシュバックだと少し微妙ですね
現金チャージであればなくなるたびにチャージする手間は省けませんし、クレジットカード払いであれば使用した分だけ現金のキャッシュアウトが発生することになります。一般的にはポイントが欲しいのではなくて、支払い(キャッシュアウト)を減らしたいので。
登録方法
現時点では詳細不明ですが、どうやらメトロポイントクラブから登録するようです。メトロポイントクラブとは、2018年3月から始まった東京メトロPASMO(パスモ)のポイントサービスです。
こちら詳細わかったらアップデートしていきたいと思います。
対象路線
注意:東京都の地下鉄には運営元が2種類あります。東京メトロと都営地下鉄です。休日メトロ放題は、東京メトロ管轄のみです。
東京メトロの路線
- 銀座線
- 丸ノ内線
- 日比谷線
- 東西線
- 千代田線
- 有楽町線
- 半蔵門線
- 南北線
- 副都心線
都営地下鉄の路線
- 都営浅草線
- 都営三田線
- 都営新宿線
- 都営大江戸線
休日メトロ放題の背景
どのくらいお得かということも大事ですが、サービスが生まれる背景を考えてい見たいと思います。
テレワークによる減収
1か月定期の場合は約15日ほどで定期券の方がおトクになるため、通常オフィスワーカーは定期券を購入します。しかし新型コロナウイルスの感染拡大によって東京都ではテレワーク導入率が上昇したため、定期券の購入をやめる企業が増加しました。出社した日数を実費で補填するようになったのです。
こちら(下左図)は東京都が公表している東京都にある企業数です。2016年において会社企業が「24.9万社」存在しています。

テレワーク導入率を最大値と最小値の中間の57%を採用してみます。
◆1.テレワーク実施企業数(推測)
24.9万社×57%=14.19万社

次にテレワーク実施回数から定期券の購入率を見てみます。週4回の出勤×4週間だと16日/月 であり定期券を購入した方がお得になります。つまり週当たり出勤回数が3日以下が対象となります。
下図ではテレワーク実施1回=週4日の出勤とします。
◆2.テレワーク実施企業数における、定期券から実費精算に切り替えた企業数(推測値)
14.19万社×(18.1%+15.6%+15.9%+26.1%)=10.74万社 となります。


http://jobgood.jp/chusho
小規模事業者を除いて、1社あたり従業員数を推計していきます。
◆3.大規模・中規模事業者の1社あたり従業員数
3,667万人÷56.8万社=64.5人
ここに東京都のテレワーク対象企業数(10.74万社)と1社あたり従業員数(64.5人)を乗算します。
◆4.テレワークによって定期券を購入しなくなった人数(推測値)
10.74万社×64.5人=692.7万人
692.7万人が定期券を購入しなくなった? 居住地域は東京都だけでなく、千葉県・神奈川県・埼玉県があるので合っている気もします。
さて問題は、東京メトロの利用者の割合はどのくらいでしょうか…。探してみましたが見つからなかったので、最後は粗いですが、利用者割合33%と仮定します。
東京メトロ33%、JR33%、他小田急・京王・京成線など33% です。
◆5.東京メトロ利用者割合
692.7万人×33%=228.5万人
◆6.東京メトロの新型コロナを起因とする定期券損失額
定期券代を5,000円とすると、
228.5万人×5,000円=114億円
新型コロナウイルスによる東京メトロの損失額は約1,000億円なので、定期券代による損失額114億円は良い線いっているともいえるでしょう。
インフラは固定費の塊
鉄道は社会インフラですので簡単に増減便をすることができません。また命を預かる仕事なのでメンテナンスを減らすこともできません。鉄道車両という決まった箱に乗員を入れて安全に運ぶ対価として収入を得ます。その鉄道車両の乗車率が100%だろうと40%だろうと、それに関係する人員や設備が変わることはありません。
新型コロナによって乗車率が激減しても、人件費や設備費、鉄道維持費といったコストはほぼ変化がなかったと思われます。なので乗車率を上げることが達成すべき目標となることから、休日乗り放題のプランが生まれたのだと思います。
結局お得なの?お得じゃないの?
地下鉄の料金体系
東京メトロの運賃は距離換算で運賃設定されています。
千代田線の一部や南北線の一部においては、特殊区間として別料金が設定されていますが、基本的には下記表のとおりに設定されています。直線距離ではなく、実際に電車がはしる距離で計算されています。
キロ程(km) | 普通券(きっぷ)を購入してご乗車(10円単位) | ICカードでご乗車(1円単位) |
---|---|---|
1km~6km | 170円(小児90円) | 168円(小児84円) |
7㎞~11km | 200円(小児100円) | 199円(小児99円) |
12㎞~19km | 250円(小児130円) | 242円(小児121円) |
20km~27km | 290円(小児150円) | 283円(小児141円) |
28km~40km | 320円(小児160円) | 314円(小児157円) |
どのくらいお得なのか。
距離によって運賃が変わるということは、距離によってお得度が変わる、ということです。6㎞以内の距離を月8日往復しても2,688円(168円×2回×8日)です。月8日は行くけど、定期の方が得になる15日には達しないという人はあまり多いケースではないと思います。
7㎞~11㎞の場合、199円×2回×5日=1,990円となり、このあたりがボーダーとなってきそうです。毎週一回決まった場所に出かける+月に1-2回不特定な場所に遊びに出かけるイメージです。
たとえば、週1回習い事で新宿に出かけていき、ほかに六本木や秋葉原に買い物に出かけるといったところでしょうか。
距離をイメージしてみる
距離を意識して電車に乗っている人は少ないのではないでしょうか。また東京メトロは地下鉄なので(丸ノ内線など一部は地上を走っているときもありますが)余計に距離感はわかりません。「渋谷、池袋、大手町」からの7㎞~11㎞区間を調査してみました。
調査方法として、Google Mapの距離測定機能を利用しました。下の画像は渋谷駅から神保町までの距離が7.22㎞と表示されています。

渋谷
若者の繁華街の象徴の街「渋谷」です。銀座線(G-01)、半蔵門線(Z-01)、副都心線(F-16)が乗り入れています。
7㎞~11㎞の駅名 | 区間距離 | 起点からの駅数 | |
---|---|---|---|
銀座線 | 銀座駅 | 7.14㎞ | 8駅 |
半蔵門線 | 神保町駅 | 7.22㎞ | 6駅 |
副都心線 | 雑司が谷駅 | 7.24㎞ | 6駅 |
池袋
丸ノ内線(M-25)、有楽町線(Y-09)、副都心線(F-09)です。
7㎞~11㎞の駅名 | 区間距離 | 起点からの駅数 | |
---|---|---|---|
副都心線・有楽町線 (和光方面) | 地下鉄赤塚駅 | 約7.90㎞ | 7駅 |
有楽町線(新木場方面) | 永田町駅 | 約7.64㎞ | 7駅 |
丸ノ内線(荻窪方面) | 淡路町駅 | 約7.24㎞ | 6駅 |
大手町
千代田線(C-11)、東西線(T-09)、丸ノ内線(M-18)、半蔵門線(Z-08)です
7km~11㎞の駅名 | 区間距離 | 起点からの駅数 | |
千代田線(北千住方面) | 町屋駅 | 7.47㎞ | 6駅 |
千代田線(代々木上原方面) | 明治神宮前駅(原宿) | 約7.11㎞ | 8駅 |
東西線(中野方面) | 高田馬場駅 | 約7.00㎞ | 6駅 |
東西線(西船橋方面) | 西葛西駅 | 約9.02㎞ | 7駅 |
丸ノ内線(荻窪方面) | 新宿御苑前駅 | 約7.21㎞ | 7駅 |
半蔵門線(押上方面) | 押上駅 | 約8.21㎞ | 6駅 |
休日メトロ放題に向いている人
①定期的に習い事がある
習い事のために2週間に1回遠方へ行く。もしくは1週間に2回近場へ行く。といった人におすすめ。今までは会社の定期券を使って交通費は実質無料で通っていたが、交通費実費精算のため負担が増えたという人にとってはよいサービスでしょう。
②休日はとりあえず渋谷や池袋の繁華街に行きたい
特に用事があるわけではないが繁華街の雰囲気が好きで気が向くと行きたくなる、といった人におすすめ。毎週渋谷のスタバで時間を過ごしたいけど、実はお金がもったいないなんて人にとってはいいサービスとなるでしょう。
休日メトロ放題は利用者を選ぶちょっとニッチなサービスですが、鉄道業界への新しいサービスとなる可能性がありますので興味があれば是非利用してみてください。
ちなみにリモパパは週5日のテレワーク&JR沿線在住なので利用することはなさそうですので…。